自分の前世に

 よく私は誰それに生まれ変わりだとか、前世は貴族だったとかいうけどそれって本当かよ? まあいい、仮に本当だとして、まったく記憶のない前世がいったい何の意味があるんだよ、おいらにはまったくわからねぇな。例えばよ、おまえさんの来世だという男がタイムマシーンに乗って来てこういったとする。「あなががわたしの前世ですね?つまりわたしなんですよ。あなたはわたし」 あんたはあんたでなくて、来世の前世ということだよ。納得できるかいそんなこと。この変な話はあんたの前世ともその前とも成り立つんだよ。 
 どうだい?こうなってくると現在の自分以外の自分に意味があると思うかい? 過去から現在に続く一貫した『自分』とは一体何だよ。 それが本当の自分だとしたら、いまのあんたは一体なんなんだ。 過去にあったトラウマとか、そんなもんが現世に影響すると考えるのかい? 
 ついでにもう一つ。霊能師の正しいやり方を教えてやるよ。まず、あまり有名でない誰かを調べておく、それであんたの前世を決めるのさ。 霊能師はあんたの前世はそのあらかじめ調べてある人間だと言えばいい、それだけさ。 きっとあんたはソレが誰か調べはじめる。 そして驚いたことに霊能師が言ったことが次々的中するというわけさ。 
 次は悪気はなくても前世を信じてしまう場合だが、なにかのキッカケである過去の誰かの話を聞いたとする。 それもその人の前世になり得るんだよ。 聞いたことを忘れて、話だけ覚えてたとする。 そしてそれを何かの拍子に思い出すと、こんなことを知っているのはきっとその人がわたしの前世と思い込んじゃうパターン。 
 おいらは決して前世とかを否定しているわけではないんだぜ。そんなのは人間には証明できねぇよ。 俺が言いたいのは自分というものすらよくわからねぇのに、前世もへったくれもないんじゃないかってことさ。 この話は意外と奥が深いぜ。自分というのは今までの記憶を持っている人かい? それともその性格やかんがえかたを持つ人かい? 結局、わかんねぇだろ。