わかったこと

 おばちゃんが魚屋で見たこともねぇ魚をみて、オヤジに聞いてたよ。「ねぇ、この魚なんていうの?」「さよりっていってよ、刺身でもてんぷらでもいけるんだよ」といわれ、納得してたっけなぁ。 きっと、おばちゃんの頭ん中はさよりを「わかった」と思っているはずだぜ。 けど、ほんとかぁ? みんな、物の名前がわかったことで、8割はそのものがわかったと思っているが、それはちょっとちがうぜ。 なに、本質を見極めろとかもっと徳をつめだとか説教するんじゃねぇんだよ。 ひらたくいうと、完全に物事を理解できているやつは世の中に一人もいないって言いてぇんだよ。 地球がお天道様の周りを回っているって知ってるって? じゃあ聞くがよ、どうしてまわってんだよ? 万有引力かぁ? じゃなんでそんな法則がなりたつんだよ? きっと、専門家ならもう少し答えられるんだろうがよ、どの道、なぜなぜやっていけば、必ず答えられなくなるんだよ。 つまり、だれもなにもわかっちゃいないってことよ。 ある範囲でわかっているってことさ。 人によってその範囲の広さは違うし、それを自慢するやつもいる。 でも、そんなの目くそ鼻くそさ。どっちもなんで世の中が存在するのかは答えられよ。 
 そこえいくと、宗教家って言うのはえらいもんさ。 かならず世の人はその問でこまることをしっている。だから、その答えを「神」だとか「仏」とかと信じるんだよ。 そうすることで、なんとなくわかった気にさせて、わからないっていう不安を取り除くのさ。 人間って「わからない」ってことが本能的に大嫌いだからね。わからねぇからわかるがあるのによ。